「日本の製造業を維持するには,機械や電気・電子,金属・冶金などの基幹技術の専門家が絶対に必要です。」
電気電子系の大学関係者としては極めて心強いお言葉ですが、誰の発言だと思いますか?
日経ものづくり2009年5月号に掲載された「私が考えるものづくり 理科好きを増やす方法」という記事に掲載された、東レCEO&COOの榊原定征さんのご発言です。
化学系学科出身の化学メーカー社長がこういうことを言われるのは意外でしたが、雑誌が雑誌なので機械系の人たちに向けた言葉なのでしょう。日本経済団体連合会副会長・産業技術委員会委員長および内閣府総合科学技術会議議員としての立場から、日本の子供たちの理科離れを憂えたインタビュー記事のようです。
「理科離れ」よりももっと深刻なのが「工作離れ」「ものづくり離れ」だと思います。
電気製品も機械製品もあまりに進化しすぎて素人では修理はおろか分解すら困難になってきています。しかも、ゲームやネットの普及で、子供が成長する過程において目の前のモノを自らの手でいじくるという経験を積む機会がどんどん減ってきています。
さらに、「価格破壊」の名のもとに、粗悪あるいは低級な工業製品が身の回りにあふれて、工業製品は安物使い捨てという風潮が強くなってしまっています。
これでは、工学系の人気が落ちるのもしかたがないですね。
そろそろ、低環境負荷社会や持続可能な現代文明をめざし、世界中で高性能でエネルギー利用効率の高いモノ、高耐久性のモノを大事に長くつかうように舵取りしていかないといけないでしょう。また、そのような高度なモノを創り出す人たちに、社会全体が敬意をはらうようにしないと。
話が変わりますが、私MNも1990年代はずっと東レ社員だったので、この榊原さんの名前と顔は記憶に残っています。
やめた人間が言うのもなんですが、東レという会社は良い会社だと思います。
良いと思う理由はいくつもありますが、その一つが、この方のように研究系・技術系出身の人(榊原さんのキャリアは企画系が長いですが元々研究所におられました)が社長になったり役員になることが多いという点です。メーカーの経営陣の中核はやはり技術系であるべきだと思います。コンシューマー製品が中心の会社だとまた違った意見も出てくるでしょうけど、メーカーであるかぎりは、技術系社員が働きがいを持って意欲的に働く会社のほうが強いのは当たり前です。ところが、営業系や経理系出身者が社長になると、往々にして技術者がやる気をなくすような発言や経営を平気でやります。技術系社員がやる気をなくしたメーカーは長期的に見て没落するしかありません。
そうやって、日本ではいくつものメーカーが10年20年かけて没落してきました。
本当に残念です。
MN
0 件のコメント:
コメントを投稿