2006年2月28日火曜日

半導体物語(その2)

僕たちは化合物半導体です。
GaAsなどのIII-V族、ZnSeなどのII-VI族ほかいくつかの種族が仲間です。最近、GaNなどの窒化物半導体も仲間に加わりました。さまざまな仲間がそれぞれの得意技を発揮して活躍しています。ジャニーズのようなものかな?(笑)
かつては主役を期待された時期もありましたが、シリコン君の主役の座は揺るぎそうにないので、彼の苦手な分野で名バイプレイヤーとしての確固たる地位を築いています。僕らがいなければ光通信も携帯電話も成り立たないし、色とりどりに光るLEDも無かっただろうね。
複数の元素でせん亜鉛鉱型の結晶や六方晶を作ります。電気陰性度が違う組み合わせほどイオン結晶性が強くなり、もろくなる上に欠陥の無い結晶を作るのが難しくなります。結晶はすぐに割れてしまうので、やさしく扱ってね♪
なにしろ仲間が多いので、様々なバンドギャップをもったものを結晶の格子常数をそろえて作れるのが強みです。仲間同士を積み上げたヘテロ接合を使ってキャリアの障壁などをつくる「バンドエンジニアリング」は僕らの得意技。これがなければ、半導体レーザーは作れません。また、波動関数が干渉を起こせるコヒーレント長以下のサイズでポテンシャル井戸構造を作ると量子効果が現れ、一つの材料では得られないような性質を発揮させることができます。超格子とか量子ドットと呼ばれています。かっこいい名前でしょ?1970年代から80年代には半導体物性研究の花形だったんですよ♪
レーザーと言えば、光を出すのが僕たちの使命と言ってもいいかもしれませんね。
みなさんも、赤や青に光るLEDが身の回りにあるのは気づいているでしょう? LEDは、みんな僕たちの仲間です。1990年代にGaN君が青く光るようになったので、今では三原色そろってます。赤外や紫外も光らせることができますね。どんな元素を混ぜるかでバンド分散が変わるので、誰もが光るとは限りませんが、輻射再結合が許される仲間は多いのです。
もう一つの自慢はキャリア移動度かな。
僕らの仲間は、シリコン君より足が速いものが多く、InGaAs君などはシリコン君より5倍以上速く電子を流すことができます。それを活かして、100Gz以上の高い周波数でも増幅できるトランジスタが作れます。
でもあんまり大量に使わないでね。クラーク数のランキングを見てもわかるように、僕らの仲間はあんまり埋蔵量が多くないから。シリコン君みたいにありふれてないんだよ。

MN

2006年2月27日月曜日

半導体物語(その1)

私の名前はシリコンです。
ちょっとはずかしいですが、半導体の王様と呼ばれています。
なぜ私が半導体の王様なのかって?
まず、地殻にうなるほど含まれている元素なので、大量に安く手に入ります。
IV族の元素半導体なので、ともかく高純度にすると良い結晶ができ、良い特性が得られます。
このあたり、化合物半導体君とは毛並みが違います。(笑)
同じIV族でも、優柔不断な弟の炭素とはちがってかたくなにsp3軌道を保つし、太っちょ兄貴のゲルマニウムと比べて強い結合エネルギーを持っていますから、非常に完全性の高いダイヤモンド型の結晶を作ります。
バンドギャップも大きすぎず小さすぎず、手頃な1.1eVです。これが小さすぎるとちょっと温度が上がっただけで暴走するし、大きすぎると金属と仲良く電荷をやりとりできません。
同じ仲間同士の結合性軌道と反結合性軌道を使って価電子帯と伝導帯をつくりますから、同じとは言わないまでも電子も正孔もそこそこ速く走れます。
さらに、同じ地殻仲間である酸素君と混ざることによって非常に電気を流しにくい酸化物を作ります。酸素君の関節が柔らかい上に強く手を握ってくれるので、酸化物が安定なだけでなく、酸化物と純粋なシリコンとの境界も世間がうらやむほど完璧です。
こんな完璧主義者ですが、頑固なわけではありません。
周期表でご近所にいる硼素君やリンちゃんを、とけ込むように仲間に入れてあげることができます。ちょっとあまのじゃくな化合物半導体君とは違って、みんなと平等に手をつないであげるから、みんなが活性化してドナーやアクセプターとして働きます。
こんな性質のお陰でLSIもできるわけです。
もちろん、太陽電池やセンサーもお茶の子さいさいです。
えっ、苦手なことはあるかって?
実は....光を出すことだけは大の苦手です。
電気伝導に使うのは、シグマ結合の結合性軌道と反結合性軌道ですから、価電子帯と伝導帯の形がかなり違います。そのため、光子を直接つくるのは難しいのです。(訳者注:これを間接遷移と言います。)
まあ、一つくらい苦手なものがあったほうがかわいいでしょ♪

(というわけで、いくつかの半導体材料の自己紹介を随時翻訳していきます。訳者の怠慢で間違っている点などあれば、ご指摘下さい。)
つづく
MN

2006年2月17日金曜日

卒研発表終了!

ということで、4年生のみなさん、お疲れ様でした。
どうなることかと思われた頃もありましたが、全員無事に発表でき、しかも、総じて思っていたよりも良い仕上がりでした。ここ1週間は特に大変ではあったと思いますが、頑張ってやればあれだけ良いものになるということを心に刻んでください。そして、進学者は行き先の研究室でこれからも研鑽に励みましょう。

MS07

2006年2月16日木曜日

日経エレクトロニクス


手元に日経エレクトロニクスという雑誌のダイレクトメールが届きました。
(研究室では日経マイクロデバイスのほうは図書室にありますが、学生の皆さんたまには読んでますか?)
ぺらぺらとパンフレットをめくっていたら、写真のような掲載記事をジャンル分けしたページに出会いました。
この雑誌の編集部には「有機エレクトロニクス」をいたく気に入っておられる方がいて工藤先生も何度かインタビューを受けていますが、それにしても「有機」を強く売り出してますね。
「有機半導体がポストSiの本命に」なんて、かのやくざな先生(うちの研究室ではないですよ)でも言えません。(笑)
こうやって世間が注目している間に、本当に応用を意識した成果が次々と出てこないと、ただのブームで終わってしまいます。みんな心してかかりましょう!
MN

2006年2月13日月曜日



まずは何も聞かずここを見てください。
・・・・・・・・・・・

このタッチパネルはニューヨーク大のHanさんたちが研究しているMulti-Touch Interactionというプロジェクトのアウトプットだそうです。FTIR (frustrated total internal reflection)という基本技術が使われていて、これまでのタッチセンサーと違って複数の接触がセンスできるそうですが、正直技術的にはたいしたことない(失礼)です。でも、ムービーを見ると、そんなことより「PCやゲームがこんなインターフェースだったら面白い」と一人のユーザーとして思いますよね。ニンテンドーDSと同じで、「枯れた」技術を組み合わせていかに「使いたくなる」ものを作るかという問題は、製品クリエーター(あえて技術者とは言いません)の仕事の王道でもあると思います。
やっぱり、一般ユーザーが使う機械のインターフェースは直感的で楽しくなければならないと思います。AppleのMacintoshの特徴もインターフェースへのこだわりの歴史ですから、Appleがこれを取り入れるという噂も納得です。

テクノロジーに関わる人間の端くれとしては、このタッチパネルと有機ELと有機センサーなどを組み合わせて、プラスチックの下敷きみたいな薄型PCを作ってみたいですね。
MN

卒論

ただいま卒論のかき入れ時です。4年部屋にも張りつめた空気が流れているようです。教員が現れたときだけかもしれませんが。(自分のときはそうでしたw)

毎年のことですが、研究室のサーバーに置いてある「卒論修論執筆心得」すら読んでいないと思われる原稿が大量に出てきます。たぶん皆さんがこれまでに書いたことの無い分量の「理系の文章」ですから、内容によっては構成を考えるところから大変だと思います。
今からでも遅くないので、一段落したら木下是雄先生の書かれた「理科系の作文技術」(中公新書)を読むことをお勧めします。
安い本(ユーズド価格100円になってますねw)ですから、買っておいて損はないと思います。これを見ると、別に理系学生に限らず全ての文系の人も読んでみるベキだと実感します。(特に、要点の判らないだらだらした文書を書くお役人!)

この本を読んで、自分の文章が「逆茂木型」になっていないか確認してください。たぶん、ほとんどの人の卒論が逆茂木型ですね。

MN

2006年2月11日土曜日

blogをはじめてみました

分子機能デバイス分野スタッフ用のblogをはじめてみました。
スタッフの独り言(ぼやきはやめましょうね!)や学生の皆さんに聞いて欲しいこと、また、業界の最新情報などについて、気楽に書き込んでいけばいいかと思っています。

MN