2006年3月1日水曜日

半導体物語(その3)

わたしはアモルファス半導体です。
アモルファスって何か知ってますぅ?
語源はギリシャ語のa-morpheで、「はっきりした形を持たないもの」という意味です。優柔不断ってわけじゃないですよぉ。結晶のような長距離秩序がない固体がアモルファスって呼ばれているんです。熱力学的には非平衡な状態なのですが、化学気層成長(CVD)法などの薄膜成長ではそもそも非平衡で膜が作られるので、ごく普通にできちゃいます。
半導体としての歴史は、1968年に多元系カルコゲナイド薄膜のスイッチング特性などが報告されて以来の長い歴史があるんですよ。
その後、1975年に水素化によってアモルファスシリコンのpn制御ができることがわかってからスポットライトを浴びる材料になりました。80年代にはアモルファスシリコンを使ったデバイスが盛んに研究されて、太陽電池やTFTとして皆さんに使ってもらえるようになったんですぅ。*^_^*
でも、TFTでは最近ポリシリコン君に押されているのでちょっと肩身が狭いです。(T_T)
あ、それと、プラスチック基板上でも作れるので、曲げることができる「フレキシブルトランジスタ」や「フレキシブル太陽電池」はわたしが元祖です。これも、最近有機半導体たちに押されているかも。(^^;)
でもね、最近、酸化物アモルファス半導体という仲間が巻き返しをもくろんでいます。
アモルファスシリコンだと、シリコン同士のσ結合による準位が構造ひずみによってとっちらかってしまうので、ギャップ内準位の多いバンド構造になってしまいます。そのせいで、キャリアは捕まっては動くというのを繰り返すホッピング伝導でのろのろしか進めません。
でもね、一部の酸化物アモルファス半導体(例えば、InGaZnOなどが売り出し中♪)では、重金属原子の大きなs軌道同士が酸素をまたいでお隣の金属s軌道と重なることができて、そこそこのバンドをつくれるんですよ。そのせいで、電子だけですが(酸素が電気陰性度高くって電子を持って行くので、重金属原子の軌道は伝導帯になります)移動度がアモルファスとは思えないほど高くなります。結晶半導体のみなさまにはかないませんけど...
こんなおくゆかしいわたしですが、今後ともよろしく♪

MN どこまで続くか....